「一つの人生ひとつの家」

ひとりひとりの人生が、一つ一つの家という形になった時、それが建築家の仕事が成就した時と実感してい
ます。

百人の建築家がひとりの住まい手の住まいを設計すれば、百の設計図が出来上がるように、けして答えは一
つでなければならないということはないのですが、いつも不思議なことに、「この家はこの御夫婦とその家
族があったからこそ出来上がった家だなあ」と実感してしまうのです。

敷地という大きな出発点を前提にして、そこに住まわれる御家族、そして日に日に変化していく御家族の状
況。健康、経済、そして社会的な条件、本当に家族の関係というものは、不安定です。にもかかわらず、建
築というものはとても固定的であり、なかなか変化させにくいものです。この矛盾点を少しでも和らげ、建
築を柔らかくするのが、設計の妙味と言えるところなのかも知れません。

もちろん水周りや、暖冷房、最近の話題からすれば、健康で安心できる材料に対する専門知識などは、設計
の上では欠かせない条件です。でもそれだけでは家というものにはなりません。無から有を創るという錬金
術師の資格も設計者には必要です。
人と人との力で創る家づくり、それだからこその妙味が、住まいづくりにはあります。

・間取りが語る住生活

人生は時間と同じように留まることはない。常に時が訪れ時が去っていく。そして刻々と変化していく。予
想はできても、予想と違って変化していってしまうのが常理である。経験では、5年ごとに家族と自分の状
況が変化しているように見える。
それに対して家というものは固定的である。この矛盾に設計というドラマがあると言っても良い。
それぞれの家の間取りは様々であるが、家と人と合わせて見ることが家を考える大切な視点といえる。


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