丸谷随筆集

2015/7/17
一つの人生ひとつの家
ひとりひとりの人生が、一つ一つの家という形になった時、それが建築家の仕事が成就した時と実感してい
ます。

百人の建築家がひとりの住まい手の住まいを設計すれば、百の設計図が出来上がるように、けして答えは一
つでなければならないということはないのですが、いつも不思議なことに、「この家はこの御夫婦とその家族があったからこそ出来上がった家だなあ」と実感してしまうのです。


敷地という大きな出発点を前提にして、そこに住まわれる御家族、そして日に日に変化していく御家族の状況。
健康、経済、そして社会的な条件、本当に家族の関係というものは、不安定です。
にもかかわらず、建築というものはとても固定的であり、なかなか変化させにくいものです。
この矛盾点を少しでも和らげ、建築を柔らかくするのが、設計の妙味と言えるところなのかも知れません。


もちろん水周りや、暖冷房、最近の話題からすれば、健康で安心できる材料に対する専門知識などは、設計の上では欠かせない条件です。
でもそれだけでは家というものにはなりません。
無から有を創るという錬金術師の資格も設計者には必要です。
人と人との力で創る家づくり、それだからこその妙味が、住まいづくりにはあります。


・間取りが語る住生活

人生は時間と同じように留まることはない。常に時が訪れ時が去っていく。
そして刻々と変化していく。
予想はできても、予想と違って変化していってしまうのが常理である。
経験では、5年ごとに家族と自分の状況が変化しているように見える。
それに対して家というものは固定的である。
この矛盾に設計というドラマがあると言っても良い。
それぞれの家の間取りは様々であるが、家と人と合わせて見ることが家を考える大切な視点といえる。